通訳ガイドの印象を左右する外見。アンケートを見たらお客様の本音が…。まずは清潔、そしてスマートに、できればセンス良く。

通訳ガイド

お客様のガイドに対する本音が書かれるアンケート、服装や清潔感に対する酷評に絶句…。だが、考えれば当然のこと。自分の服装や身だしなみにも注意をしようと肝に銘じた。

🔸つい見てしまうアンケート
アンケートは日本の手配会社ではなく、ツアーの募集をした本国のエージェントが作成し、最終日のガイドが回収することが多い。回収後は日本の手配会社も内容を熟読した後、本国に返送される。

ある13日間9都市の西から始まったツアー。全行程を合計3人のガイドが担当した。あの時は2台口だったので合計6人のガイドが関わった。

アンケートを回収するのは東京のガイドで1号車担当した私。65名様で約40枚のアンケート、精算書とともに手配会社に返送することになっている。が、恐る恐る見てしまう。見れずにはいられないのは人間の常。ホテルや食事、旅程の組み方等の手配に関する項目が並ぶ。お客様はABCDEの5段階評価をつける。さらにコメント欄には本音が書かれてる。

私が恐る恐るでも見たいのは我々ガイドにへの評価である。「うわっ、ショック!あの人、大人しい顔して…」と毎回、小姑のように重箱を突っつくような本音をぶつける人が各グループに一人はいる。ツアーが終わってから色々言う人、日本人には多いけど欧米人にも実はいるのだ。

🔸ガイドに関する質問は主に5項目
-日本文化や歴史の知識
-外国語能力
-旅程管理
-感じの良さや接客態度
-服装や髪形等の身だしなみ

この中で一番驚いたのが5番目の「服装や身だしなみ」、つまりガイドの外見がどう見られていたか、ということだった。旅行会社は酷である。こんな項目設けなくていいのに…。ガイドの外見は、聞かれなければ問題にならない。が「強いて聞かれればあまり良くなかった」とか、その手のことだと思う。

事実、外見の総評で一番多いのがB評価だ。Bはgoodで、Aのexcellentには届かないので、「まずまずでしょう」てな感じか。褒められたい私はBですらショック感を覚える。が、ある人は服装にCをもらってしまって、これは正直言って気の毒に思う。このエージェントのCは「普通」ではなく「あまり良くない」となる。そもそも日本以外の国で「普通」なんて意見はない。その人の服装はそんなに悪くなく、いわゆる普通なのに…。それを書いたお客様の基準が細かすぎる可能性もあり、もちろんエージェントはその辺は理解してると思う。

さて、服装の項目で唯一Aをもらったのは関西のガイドのM子。彼女とは親しいので早速聞いてみた。

私 「Mちゃん、服装の項目、あなただけAだったわよ。オシャレさん、いつも何に着てるの?」
M子「えっ、わたしがA???なんで?いつもユニクロの襟付きシャツとコットンパンツよ。靴はスニーカーに見えるローファー。バッグの色は一応服装に合わせてる」信じられない感じのM子だが「おお、なるほど」と私は思った。

🔹衣食住を共にするのがガイド
アンケートのガイドの外見の項目は服装だけではなく、全体的に清潔感があったか?、とか、好感を持てる印象だったか?という内容だった。つまりM子のように、小ざっぱりとして、かつ本人に似あっており、スマートな印象を与える人はお客様も心地よく感じるのだと思う。

それ以来私は小ざっぱりした服装を目指すことにした。外見に敏感なお客様は確実にいる。各国の富裕層の個人客や、オシャレな国(フランスやイタリア)のツアーなどで、もちろん彼らはガイドに外見の美しさは求めるわけではないが、衣食住を共にするのがガイド。だからお客様が一緒にいて不快に感じるようなことは避けたいものだ。

🔸回収したアンケートを見ずにはいられない症候群
ガイドの集まりで私がアンケート見ちゃった話しをすると、みんな同じような経験があると判明。「気になるもん、見るなという方が無理」「ショックだったけどお客様の本音を知れてよかった」など、ああ、みんな同じなんだな。

さらに「自分の評価だけでなく他のガイドの評価を見てしまった」、これはもう人間の性(さが)。みんなに言えること。そこでガイドの外見についてお客様の具体的な本音を読んだガイドたちによる情報交換が始まった。一番目にしたのは清潔感だとなった。

🔹清潔感
■体臭や口臭などのニオイ系
実はこれは私があるお客様から、日本の前に訪問したあるアジアの国のガイドについてこの内容に不満をもらした意見を聞いたことがある。が、これは他人事ではない。日本人は無臭と思い込んでる人が多いが、日本人に加齢臭は多い。また日本人は口呼吸をする人が多いため口臭は割とある方だと言われている。いずれにせよ一般的に慣れてる匂いは気にならず、初めての匂いには敏感になる。つまり外国人のお客様は我々が感じなくなった日本の匂いを感じ取りやすいということだろう。

■衣類の汚れ、爪の汚さ、見るに堪えない口元や耳、不潔なマスク
欧米では肉体的な話題はタブーである。口にすること自体が失礼となる。なのでお客様は指摘しないが実は内心思ってるかも知れない。私はネイルをしないので爪は気を付けようと思う。繁忙期には爪を切ることも忘れがちで、特に冬の爪はボロボロとなり、お客様に何かを渡すときハッしたことがある。出先で爪切りやハンドクリームを買ったことが何回もあった。逆に指や爪のきれいな人を見るを心地よく、そんな人からサービスを受けたいと思う。

🔹センスの悪さ
使い古してくたびれたバッグや靴も不評。汚いマフラーなども。お客様が一緒にいて不快にならないものを持つようにしてる。衣服のシミや毛玉、人前に出れる服装であるか。特にバッグは自分でも気づかないうちにくたびれていて、汚れが蓄積してることも。その中から出す配布物をお客様に渡すのだが、お客様が喜んで生理的に受け付けてもらえるように、自分の持ち物を客観視するセンス(感じること)を磨くようにしてる。

🔹スマートであるということ
ブランド品を身に着ける必要はない。全塾のM子さんのように小ざっぱりして快活で、つまり全体的にスマートであるということ。スマートなガイディングをしてるガイドさんは外見もスマートだと思う。衣食住を共にするのがガイド、一緒にいて心地よく思っていただけるように心がけたい。