G-ZRD88RV0FB 通訳案内士、ノンライセンスガイドからナンパ、いや、ガイドのセールスを受ける。 - 通訳ガイドのオモテナシ奮闘記 by ばるばら

通訳案内士、ノンライセンスガイドからナンパ、いや、ガイドのセールスを受ける。

通訳案内士

ナンパといっても男性からのお誘いではない。「京都の町をご案内しましょうか?」と謎の自称ガイド(外国人男性)から英語でアプローチを受けた、ということだ。場所は京都駅。私は小さめのスーツケースをガラガラ引いてあるホテルを目指していた。翌日、京都から始まるツアーの前泊だった。

🔹お上りさんに見えた私?

私はアジア人観光客に見えたのか。年齢は中年だし、ならばお金はありそう?そして一人旅では寂しいから「あら、あなた悪くないわね」となるとでも…⁉

男は国籍不明の白人系在日外国人。年齢は30代?焼けた顔に碧色の瞳。対応言語を聞くと英語、フランス語、スペイン語、イタリア語とのことなので、南フランスあたりの人?いや、決めつけるのはいけない。

「一応お聞きします。ガイドライセンスはお持ちですか?」取り合えず聞いてみた。この手の人はたいてい旅行会社の名刺を持ってることが多い。聞いたこともないエージェントの名刺のこともある。が、この男はライセンスはもちろんのこと名刺も持ってなかった。

私「ごめんなさい、わたしガイドは必要ないんです」
男「京都は効率よく回った方がいいですよ」
私「それはもちろんですよ…、でも、私がガイドなんだもん」と言ってライセンスを見せる。夕方で疲れていたし、早くホテルに入りたかった。
男「おっとこれは失礼。Thank you」と言って去っていった。

無礼な人ではなかった。そりゃそうだ。ガイドとして雇ってもらうのだから礼儀正しい方が受け入れてもらえるし、見た目も小ざっぱりしていた方がいい。

🔸日本の文化をどこまで理解してるのか?

これはもうわからない。こういう人は一体どんな案内をしてるのか?複雑な日本文化を説明できているのだろうか?日本在住期間がわずか1-2年なのにもガイドをしてる外国人も知ってる。その人は日本文化を紹介するカリスマ外国人ユーチューバーが企画した格安ツアーの下請けガイドをしていた。

🔸YouTuberガイド

コロナ前のことだが、日本ブームとともに在日外国人が観光ユーチューバー化し、京都や奈良をバーチャルで案内し、B級グルメも網羅。自分の母国の人からカリスマのように崇められるという現象が起きていた。

外国人が日本について調べるとその人の動画にたどり着く。ガイド本も出している。そして彼がツアーをオーガナイズすると売れるらしい。ツアーは$2500くらいで自由旅行に近いのでなるべく安く旅したい人をターゲットにしてる。たいていそのカリスマガイドは男性だ。

売り文句は「○○○が案内する日本」等で、当初はその○○○氏が直々に京都観光のガイドとして来ていたが、次第に下請けガイドを使うようになった。

🔶日本人ガイドをけなすストリーミングを展開する外国人自称ガイド

その下請けガイドをしてるある外国人男はネット配信で「日本人ガイドなんて発音が悪いし、外国人が何を望んでるか理解してない。こんな意見が寄せられてます」と、日本人ガイドを酷評。

「ならば皆さまと同じ言語の我々が、皆様のニーズを理解した上で、あらゆる疑問にお答えし、すべての方が楽しめる日本の旅を提供します」なんて風にストリーミングを展開していた。

コメント欄には「You’re right!」とか「あなたのご案内を楽しみにしてます」といった好意的な意見も見られる。どうやら彼のプロモーションはある意味成功してるようだ。

このストリーミングを教えてくれたのは日本の旅行会社に勤務するある外国人の社員さん。「ばるばら、これを見ろ!こんな事をほざいて。何もわかってない、こいつら!」と怒ってくれた。ありがとう。あなたのように怒ってくれる人がいるのだから、日本に行ったら日本のガイドさんを!と言ってくれるお客様もいるよね。

それに「発音が悪い、外国人には興味ないことまで案内する、何言ってるかわからない」、実はこれはあり得なくもないクレームで、ある大手旅行会社のツアー企画者から聞いたことがある。国家資格を持つ通訳案内士も各自の資質が違う。もちろん資格を持ってるガイドなのだからプライドを持ってこのようなクレームはもらわないように努めたいところなのだが。

京都駅で声をかけてきた自称ガイドさん、1日いくらなんだろう。ああ、値段くらい聞いておくのだったなあ。「お好きな金額でいいです」こんな風に言う自称ガイドはよくアジアにいたなあ。

🔸アジアに行くと多い自称ガイド

一人旅のミャンマーの早朝の寺で、ある日本語ガイドさんから営業された。普段は断るのだが国家資格を持ってたし、リキシャー代込みで8時間20ドルというのでお願いした。いい人だった。

が、日本語の発音がイマイチで理解できないことが次第にストレスに…。結局は途中から英語でガイドしてもらった。失礼かと思ったが、自分の1日を、そして20ドルを無駄にしたくなかった。

この人はまだいい方。インドやスリランカの観光地では着いてきた男がいきなり説明し始めて、気を使って聴いてあげるしかなかったのに「ガイド代を」とのこと。たいていはゴロツキではないので、こちらも理詰めで反論する。

私「ちょっと待て。勝手に説明し始めたのだから契約関係は成立していない!ライセンスもないくせに」と。男「なぜ英語を話す?お前はただの日本人ではないな」と言って大体が退散する。

🔸夜の案内をする美男子?

こんな風に観光客に直接売り込む自称ガイド。日本にもいるんだな。人目もあるから、いくら仕事がなくても我々日本人ガイドはこのような営業をする勇気はない。

そう言えば数年前だが「夜のご案内」をする美男子が歌舞伎町にいると聞いたことがある。その人は外国人女性には日本男子を名乗るが実はあるアジアの国の人らしい。どうやら美男子で有名なある国の…。