都内観光も箱根も日光も公共交通にて…。
貸切観光バスはついてない。
このようなツアーが増えてきました。
が、アサインされた以上ガイドは任務を遂行しなくてはなりません。
ツアー担当者は
「本国のエージェントからのリクエストです。
ばるばらさん、経験あるのだからお願いします」
もちろん経験はあるし、毎回トラブルも回避してきました。
が、バスが付いてればもっと色々上手に説明できたし、
お客様の疲労度も違ったはず…、いつも思います。
最近のインバウンド事情
難儀な時代になった。
昔は団体には観光バスが付いていたのにぃ。
ちょっと前から15名いないと観光バスは付かない。
14名だと公共交通となる。15名がデッドラインかあ。
それが最近は20名超えなのにメトロのことも…。
すると友人のガイドが
「先日38名メトロで都内観光やらされたわよ。
本国からベテランの添乗員がいて、二人で工夫して、
お客様にも協力してもらってどうにかなったけど」と言う。
イヤホンガイドがあればラクなのに…。
「だったらイヤホンガイド付けてください」
日本の旅行会社には100万回お願いしました。
小さなマイクでガイドが話し、お客様はイヤホンでその話を直接聴けるのです。
もちろんイヤホンガイドがあっても20名超えをメトロに乗せるのは物理的に大変です。
ただイヤホンがあれば駅のホームで大声を張り上げて説明しなくてもすみます。
が、旅行会社は
「オプションでイヤホンガイドを用意したけど、
本国のエージェントが□に✓チェックを入れてない、
つまり注文しなかったということです」と言います。
ああ、なるほど、その項目を選べば追加料金が発生します。
高くなればなるほどツアーは売れません。
前もって説明してもお客様は忘れてしまうことも
ガイドをしたことない人はおそらく
「必要な事は前もってホテルで説明しておけば、、、」
と思うでしょう。
もちろんですよ。
皆さまが思いつくことはプロの我々はとっくにやっています。
さらに!皆さまが思いもつかないことまでもやっています。
我々ガイドは前もってうまく説明することで
様々なトラブルを防げるので色々と工夫をしています。
配布物も用意して、書いたものを見て理解してもらったりもしています。
が、いつもそうはいかないのです。
お客様も疲れてくると忘れたりするんですよね。
例えば「エスカレーターは左側に立って下さい」
慣れるまでは何度も言うし、お客様も何日もメトロを利用し
だんだん慣れてきて体得できるようになっています。
が、つい失念して本国の習慣で右側に立ってしまったりします。
10年位前、まだ鉄道各社が現在のように「右側を空けて歩かないで」と
アナウンスする前、うっかり右側に立ってしまったお客様に対し
サラリーマンの人がわざとぶつかってきました。
実はこの”ぶつかってわからせる”というのは初めてではなく
当時の東京ではまあまあある手段でした。
やられたお客様はショックですよね。
非常に気の毒でした。
大阪や関西なら
「ちょっとごめんな、通らしてな」と、
その一言がとても感じがいいんですね。
その後鉄道各社でも片側を歩くのがいかに危険かわかったようで
「片側は空けないでキャンペーン」が始まりました。
おそらく何か事故があったからではないかと思います。
許容範囲のマージンが狭い日本のローカルルール
ぶつかってわからせるのは、相手が仮に間違っていて
本当に邪魔だとしても絶対にやってはいけないことですね。
世界の常識では、ルール以前にまずは人命や安全性が重視されます。
ですが少し前の日本の殺人的ラッシュアワーでは、
世界の常識よりも日本特有のローカルルールが重視されました。
そんな中に慣れてない外国の方々を大人数でお連れするのは
やはり旅行会社の手配としては私は間違っていると思います。
ツアーを安くするための工夫
昔は団体には観光バス、個人客にはハイヤーと決まっていました。
来日する観光客がそれほど多くなかった時代です。
世界中を旅行し尽くした富裕層が来日してたころです。
が、日本ブームで観光客は増加。日本の旅行は一般化しました。
各社がこぞって日本のパックツアーの値段を下げ始めました。
旅行代金が5000ドル以上だと売れないんですね。
4000ドルに下げるためには省けるものは省きます。
たとえば…
▪ツアーの食事は朝食以外はフリー
▪空港の出迎えはガイドでなくアシスタント
▪観光バスは付いてなく公共交通を利用します。
観光立国の弊害
メトロに乗る前に「三つ目の●●駅で降ります」
とお客様に言っておいても一つ手前の駅を出て少ししたら
「次で降りますよ」と念を押した方がいいです。
激込みの車内で3つの扉に別れて乗車したお客様同士が
大声で「次で降りるぞ~‼」と叫び
するとサラリーマンが舌打ちをしたりします。
私は何度も謝りましたし、また心の中で
「本当にごめんなさい、皆さんお仕事と通勤で疲れてるのに申し訳ありません。外国人のお客様も、何日も日本を旅して、日本人が静かな国民だと知ってるんです。が、やはり、降りれなかったらどうしよう、取り残されたらどうしよう、、と言った心配な気持ちが勝ってしまいます。本国でメトロも電車も乗ったことがないし、こんなに人口密度が高い場所自体にも慣れてないのです。本当にすみません」
ガイドは皆、こんな気持ちです。
すると鎌倉に住んでる年配のお友達が
「そういうサラリーマンの人達だって旅行に行くでしょ。私だって家に帰るのに江ノ電のホームに観光客があふれて乗れないことあるもの。でも私だって旅行するのだから仕方ないと思ってるし、観光客の人に悪態ついたりはしないわよ。あなた達は気遣ってるんだから心を痛めなくて大丈夫」
と言ってくれました。
ご主人も
「日本人だってかつて団体旅行でヨーロッパの雰囲気をぶち壊しのような振る舞いがあったと思うよ。観光客はみんなお互い様だよね」とおっしゃって下さいました。
一番気の毒なのはお客様です
お客様のなかには観光バスが付いてないことを知らなかった人もいます。
年配のお客様、足が悪い方など本当に気の毒です。
普段から歩き慣れてる人でもやはり疲れますよね。
我々ガイドも連日10キロ以上歩くのはしんどいです。
ガイドはみんな大体が50歳以上ですので…。
公共交通の利用は、歩く距離が長くなります。
観光バスが付いてれば取り合えず観光地間は座って休めるし
車内は涼しいので気持ちのリセットになります。
そして夏場はやはり熱中症を発症するお客様も多くなります。
足がつったり、腰痛など過去のケガが再発される場合も…。
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16㎞!都内観光をメトロで…。
こんなにも歩くということをエージェントさんにお分かり頂きたいものです。
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